青木旅山「おくのほそ道」第二章
緑風の旅 其の四、象潟~村上
■6月1日(歩11km)
今日から2泊3日はおくのほそ道を外れ、列車を利用しながら北へ向かいます。
今日は高校の同級生で彫刻家の吉村寿夫先生の作品を観るべく秋田県井川町の国花苑に行った。
井川町は全国桜の会を通して200種類以上の桜を植樹、桜そして彫刻の町として力を注いでいる。
吉村寿夫氏は2003年の井川町サクラの森コンクールで見事優秀賞を獲得した。
24才から4年続けて国展に入賞、20代にして国画会会員となり新聞紙上を賑わした。
在住の桑名には中原中也の「桑名の驛」詩碑、「日本の第九」初演モニュメントなどを始め各地に沢山の作品を残している。
国花苑に彼の作品「RELATION-有&無」は確かにあった。
ステンレスで光り輝く作品は他を圧倒、何だか誇らしさと嬉しさで胸がいっぱいになった。
◆行程:象潟→井川町→東能代泊
◆訪問地:国花苑
◆経費:宅配1,430円/列車2,610円/昼食990円/宿7,000円/計12,030円
■6月2日(歩10km)
太宰治の小説「津軽」に紹介された千畳敷海岸にいます。
3年前は竜飛岬〜芦野公園〜斜陽館〜千畳敷など北から南に「津軽」を歩いた。
人気の五能線の列車で15分停車する無人駅「千畳敷」に魅入られ今回初めて宿を取った。
五能線しらかみ号で十二湖の青池、不老ふ死温泉に立ち寄り夕方、千畳敷に着いた。
黄金崎不老ふ死温泉で小屋掛けの露天風呂に入った。
黄土色の湯は海岸の岩に溶け込み、目の前の海に流れていった。
千畳敷は大雨で海岸に降りることはできないが、部屋から眺めるだけで満足した。
思い出に残る1日になった。
◆行程:東能代→十二湖→不老ふ死温泉→千畳敷泊
◆経費:朝食752円/飲物322円/列車2,400円/バス1,000円/昼食700円/宿9,100円//計14,274円
■6月3日(歩14km)
石川県でまた大きな地震があり、宿主から北陸の旅が無事進む様ご心配を頂いた。
先ず列車で千畳敷から能代に向かうが、約2時間のあいだ乗客はほとんど無し。
ローカル列車で一躍名を上げ人気の五能線も今や赤字、津軽線の再開も駄目になったとの事。
東北各地を歩いていると、過疎化が驚く程進んでいる事を知る。
能代から秋田そして酒田で乗換、鶴岡市の羽前大山駅に着いたのは午後3時、6時間の列車旅になった。
芭蕉のおくのほそ道に戻り今夜の宿、由良温泉まで歩いた。
◆行程:千畳敷→能代→秋田→酒田→羽前大山→由良温泉泊
◆経費:列車4,275円/昼食1,590円/洗濯300円/宿9,690円//計15,855円
■6月4日(歩32km)
芭蕉同様、海岸の景観を眺めながら温海(あつみ)に向かう。
自転車で日本一周を目指す若者に出会った。
甘いなぁと思いつつ、少しカンパした。
16代目当主のご両親が偶然滞在中で、光栄なことに少し歓談ができた。
◆行程:由良温泉→浜温泉→温海温泉泊
◆経費:宅配1,430円/飲物340円/昼食1,050円/列車190円/宿13,400円//計16,410円
■6月5日(歩32km)
歩き始めて1時間半で出羽と越後の国境、白河の関と勿来の関と並ぶ奥州の三大関所の念珠関(ねずがせき)に着いた。
地元ではこここそが義経、弁慶の勧進帳の舞台と信じられている様だ。
新潟県に入って直ぐの新府屋トンネル(605m)が怖かった。
トンネル内の歩道は狭くて水たまりも多く、真っ暗な所もあった。
トラックの風圧を受けながら汚い壁に手を当て恐る恐る歩いた。
その後笹川流れの名勝地、寒川(かんがわ)に着いた。
ここから11km続く青々とした松が茂る奇岩礁と白い砂浜の海岸線、そして沖合には粟島があった。
歩き終えた今川駅には宿の老夫婦が待機してくれていた。
車で鼠ケ関に戻り義経の上陸地跡や樹齢400年の念珠の松庭園など案内頂き、温海温泉の宿に連泊した。
◆行程:温海温泉→新府屋トンネル→寒川→今川駅→温海温泉泊
◆訪問地:鼠ヶ関、義経の上陸地跡、念珠の松庭園、芭蕉句碑
◆経費:飲物750円/昼食980円/列車190円/入場料100円/宿13,465円//計15,485円
■6月6日(歩31km)
温海岳(標高736m)ともお別れして愈々今日は越後の村上に向かう。
笹川流れとは、岩の間を盛り上がる様に流れる潮流を、中心地笹川集落の名前を冠して呼んだもの。
天気が良いので空の青に海の青、白砂のコントラストが一段と美しく、澄み切った海は沖縄の離島を想わせた。
近くにいたオーストラリアからの中年夫婦がこの美しい景色に感激、色々尋ねられ少し話をした。
実は出掛けにリュックの紐が切れ、列車の車掌にガムテープを借りた。1㌔も歩かない内にガムテープが剥がれ途方に暮れていると海辺の家の親切なお婆ちゃんに助けて頂いた。
話し好きなお婆ちゃんの話がなかなか終わらず、すっかり遅くなった。
もうこの際、時間を忘れて途中の砂浜で寝転んだり、解禁になったばかりの岩牡蠣に舌鼓を打った。
村上市に入り、風光明媚な港を見つけた。
(看板が日本語でなければフェロー諸島のよう)
◆行程:温海温泉→笹川流れ→村上泊
◆経費:列車510円/飲物450円/昼食1,800円/夕食680円/宿6,900円//計10,340円
■6月7日(歩16km)
暑くて忙しい日ではあったが、町の雰囲気が気に入り一日村上観光に費やした。
村上で一番行きたかったのが続百名城の村上城。
標高135mの平山城で、上杉謙信を相手に1年続いた籠城戦について知りたくて城守を訪ねた。
登りが急坂できつかったが、天守跡からの眺めが素晴らしかった。
村上は古くから鮭の加工と酒造りの盛んな城下町として栄えた。
芭蕉は何も書いていないが、曽良日記により村上の宿久左衛門、現在の井筒屋で2泊した事が分かる。
苦労して場所を探し当てた後、井筒屋で鮭料理をゆっくりいただいた。
千年鮭、コースメニューの説明を聞きながら最後は塩引鮭茶漬け、美味しかった。
昭和20年、創業1635年の蔵元も含めて地元十四軒が合併して今に至る。
突然の訪問にも関わらず、展示場に加えて旧仕込み蔵で今は酒の貯蔵庫も見せて頂いた。
常設展示場「和水蔵(なごみ)」はどなたでも見学ができる。
お話を伺った加藤さん。
大変好感のもてる方で、印象に残った。
◆行程:村上観光
◆訪問地:村上城、井筒屋、大洋酒造
◆経費:リュック代550円/昼食3,025円/飲物680円/夕食1,830円/洗濯900円/宿6,900円//計13,885円