■緑風の旅(5/10-6/18) 総括
5月のスタートは北の土地での爽やかな初夏の旅を連想させた。
ところが今年の気候は異常中の異常。誰もが人生で一番暑いと言った。
旅山は早くも5月半ばから厳しい暑さとの戦いを強いられることになった。
炎天下、足元からも照り返しがあるアスファルトの道を数十キロ歩くことを想像してほしい。
車はビュンビュンと通り過ぎるが、路上に人はいない。コンビニや自販機もない。
日々熱中症の危険にさらされ、加えて腰の痛みにも苦しみ、第二章は旅山のおくのほそ道全行程で最も過酷な旅となった。

一方で、辛いことばかりだったわけでもない。
旅山は第一章の後でスマホを買い替えた。
残肌身離さず持って歩くスマホは、この旅における旅山の矢立のようなもの。道具が良くなれば不思議と持ち主の腕も上がる。
第二章では初夏の眩しい光とともに美しい画像も楽しんで頂きたい。
特に瑞々しい新緑と日本海の青い海や夕景は格別だ。


■第二章行程
第一章の旅から戻り、翌日からジムで汗を流しました。
体重は2kg減りましたが食欲は旺盛で至って元気(3日間は病院の梯子をしましたが)。

第二章の旅程表です。
芭蕉のおくのほそ道では平泉が折り返し、只距離的には36%、羽黒山が50%、高岡で80%になります。
第二章は長い旅路。
最初に奥羽山脈越えの難所が続きます。
熊出没の情報もあり、熊除けの鈴に加えスプレーも購入しました。
一関のいわいの里ガイドの会を始め5地区の関係者のご助力もお願いしました。
すべての準備を済ませ、今は新緑や温泉を楽しみながら元気に尾花沢まで歩く事だけを考えています。

青木旅山「おくのほそ道」第二章
緑風の旅 其の一、中尊寺~尾花沢
■5月10日(歩9km)
bashokita
さぁ今から盛岡の町へと旅立ちます。
リュックの重量が8.5kg、重い!
ところで今日、熊よけスプレーが配送された。
熊が近くまで来たらスプレーを使う。そんな余裕があるかな?(笑)

bashokita
盛岡は10年ぶり3度目。
お目当ての渋民村の石川啄木記念館が大規模工事中で休館のため、啄木&賢治青春館、盛岡城、石割桜、啄木新婚の家、賢治ゆかりの光原社などを訪ねた。

bashokita
啄木新婚の家は現存する盛岡唯一の武家屋敷。
自転車も展示の一部? 妙に溶け込んでいる。

bashokita
盛岡市はカナダ、ブリティッシュコロンビア州都のビクトリアの姉妹都市でもある。

bashokita
市内を流れる北上川。
自然と街が調和し共存している。
ニューヨーク・タイムズ紙による「2023年に行くべき52カ所」に選ばれたそうだが、その理由も頷ける。

bashokita
一番心に響いたのはこの風景。
朝焼け、夕景、この山をいつも眺められる市民は幸せだ。

◆行程:名古屋→盛岡→つなぎ温泉
◆訪問地:啄木&賢治青春館、盛岡城、石割桜、啄木新婚の家、光原社
◆経費:列車17,370円/バス代780円/昼食720円/飲物360円/夕食2,320円/宿7,850円//計29,400円


■5月11日(歩11km)
岩手山を背に御所湖、つなぎ大橋の美しい景色を後にして、花巻に向かった。

kasnebashi
つなぎ温泉から望む岩手山。

nasujinnja
花巻では何だか人の多い所を避けたくて宮沢賢治記念館を断念、「雨ニモマケズ」詩碑に向かった。
碑の下に遺骨の一部、法華経、宮沢賢治全集などが納められた、宮沢賢治の聖地だ。

nasujinnja
詩碑の前から「下ノ畑」が眺められる。

kasnebashi
賢治が愛したという、原風景。

kasnebashi
宮沢賢治一色の街を少し離れ、花巻東高校に出かけた。
学校は緑地の小さな丘にあり、野球場のネット裏に菊地雄星、大谷翔平のモニュメントを見つけた。

◆行程:つなぎ温泉→花巻→一関
◆訪問地:雨ニモマケズ詩碑、花巻東高校
◆経費:交通費1,000円/飲物150円/昼食730円/夕食1,430円/宿7,505円//計10,815円


■5月12日(歩7km)
平泉の再訪から始めた。

nanohana
平泉の鎮護の為に雌雄の黄金鶏を埋めたと言われる金鶏山、義経妻子の墓、平泉文化遺産センターから毛越寺へ。

nanohana
毛越寺では復元整備され、今に蘇る「大泉が池」の浄土庭園が素晴らしかった。

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山門を入ると芭蕉真筆の句碑があった。
あの有名な句だ。

nanohana
一関に戻り、いちのせき文学の蔵を訪ねた。
島崎藤村、井上ひさしの若い頃の事がわかり嬉しかった。

◆今日の句:
「夏草や兵どもが夢の跡」

◆行程:一関⇔平泉
◆訪問地:金鶏山、義経妻子の墓、平泉文化遺産センター、いちのせき文学の蔵
◆経費:列車398円/ガイド料1,000円/入場料700円/昼食950円/宿7,030円//計10,078円


■5月13日(20km、うち歩12km)
いよいよ今日から山越えだ。最大の難所、出羽山地に入って行く。
熊や遭難のリスクを回避し、安全第一を旨に一関から尾花沢迄の5日間はガイド2名が同行、万全を期した。このため歩きと共にところどころを車で送って頂いている。
先月訪れた一関で各所に私のプランを説明し相談したところ、口を揃えて「とんでもない!」と言われた。
無茶を通して何かあれば各方面に迷惑をかけるし地域のイメージダウンにつながりかねない。ここは素直に地元の方々のアドバイスに従うこととした。

nanohana
今日から17日の山刀伐(なたぎり)峠越えまでは全て地元関係者の指示に従うこととし、一関から岩ケ崎までの約20kmは「いわいの里ガイドの会」のメンバー3人でご案内頂くことになった。

nanohana
山越えで最初の一里塚。
奥州街道から分岐し岩ケ崎方面に向かう迫(はさま)街道に入って行く。

nanohana
一時間ほどして苅又一里塚の入口に着く。
ここから500mほど入って行く。

nanohana
苅又一里塚の前で。
一対の盛り土が残っている一里塚は非常に珍しい。
江戸時代からの姿がそのまま残る、希少なものだ。

nanohana
語り部でガイドの千葉女史による「女殺し坂」の話も印象に残った。

nanohana
昼食は車道で待機していたもう一人のガイドさんと合流、2km先の栗原の食堂へ。
長靴に履き換えさせられて入ったが、何と農業繁忙期の4月〜6月は長靴を履いてれば100円引きとなる!

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そして夕方、山越えを無事に終えた。まもなく岩ケ崎だ。

nanohana
大雨の中マスコミ取材もあった。
同日にテレビ放映があり15日に新聞掲載された。

◆行程:一関→県境→岩ヶ崎泊
◆訪問地:新山一里塚、苅又一里塚
◆経費:昼食890円/夕食830円/ガイド5,000円/宿4,500円//計11,220円


■5月14日(30km、うち歩13km)
午前中はくりはら街道会議、午後はまやまの会の地元ガイドによりご案内頂き、鳴子温泉へ向かった。

nanohana
前日とは一変、天気も良く雪の残る栗駒山を見ながらスタート。

nanohana
鈴を鳴らしながら、熊除けスプレーを右手に持ち歩いた。
獣道もあったが道は比較的平坦だった。
何といってもこの新緑!

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午前の見所、芭蕉衣掛けの松。

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少し時間があったので、タレントの狩野英孝の実家という櫻田山神社にも立ち寄った。

nanohana
午後は千本松長根、天王寺一里塚。

momomatsuri
ガイドの説明は懇切丁寧で、如何なる質問にも答えてくださった。
鳴子温泉着後左腿に激痛が走り不安になったが、温泉で心身をリフレッシュしつつさらなる山越えに挑む。
◆行程:岩ヶ崎→鳴子温泉泊
◆訪問地:櫻田山神社、芭蕉衣掛けの松、午後は千本松長根、天王寺一里塚
◆経費:ガイド代10,000円/夕食1,400円/呑み代7,000円/タクシー1,000円/宿5,500円//計24,900円


■5月15日(歩10km)
芭蕉の「奥羽山脈越え」(中山越え)の地である。
旧暦5月15日(7月1日)の芭蕉と曽良の「出羽街道中山越え」を、時代と暦は違うが同じ日に歩く。
今回で最もきつい一日になったが、関係者の心ある案内で無事目的地に達した。
次に向かうにも宿が無いため皆さんの勧めで鳴子温泉に戻り連泊とした。

nanohana
芭蕉は雨の山越えとなったが、私は好天に恵まれた。
道中は難所として知られるが、景観はおくのほそ道中屈指だという。

nanohana
この辺りは芭蕉の敬愛する源義経一行が頼朝の追手から逃れて歩いた道に重なる。
鳴子は義経の赤ん坊が初めて泣いた所、尿前(しとまえ)は初めて尿をした所と言われている。

nanohana
中山越でも特につづら折りの道が続く難所にさしかかる。

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芭蕉達は厳しい中山越、陸奥/出羽国境を過ぎ、夕暮れに「封人の家」(国境を守る役人の家)に着いた。

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風雨の悪天のため2泊を余儀なくされ、ノミやシラミや馬の放尿の音などに悩まされたというような句を残している。

momomatsuri
午後に立ち寄って頂いた鬼首温泉。
この先はカナディアンロッキーを思わせる大自然で素晴らしかった。

◆今日の句:
「蚤虱馬の尿(ばり)する枕もと」

◆行程:鳴子温泉→中山越→→鳴子温泉泊
◆訪問地:尿前の関所、封人の家、鬼首温泉
◆経費:ガイド代3,000円/昼食1,000円/飲物3,176円/夕食4,500円/宿5,500円//計17,176円


■5月16日(歩2km)
完全休養日。
温泉三昧した後、赤倉温泉に車で送って頂いた。
宿泊予約の際の笑い話。年齢を聞かれ正直に答えたら、2階まで階段を上れますかと尋ねられた。
多分大丈夫と答えた後、トイレが近くにあるかだけ聞いた(笑)

nanohana
鳴子、東鳴子、川渡、鬼首、中山平の5つからなる鳴子温泉郷を梯子湯した。
日本にある11の泉質のうち9種を有し湯の量も大変豊富。

nanohana
宿泊した西多賀旅館は緑の湯だったが、黒、茶、白、透明など湯の色も様々。

momomatsuri
印象に残っているのは薬湯のホテル瀧島、硫黄泉の蛇の湯。
◆行程:鳴子温泉→鳴子温泉郷→赤倉温泉泊
◆経費:温泉代3,600円/昼食2,200円/飲物2,100円/洗濯800円/宿15,110円//計23,810円


■ ■5月17日(歩13km)
山刀伐峠(なたぎりとうげ)越えの日。

nanohana
元禄二年五月十七日、芭蕉と曽良が通った道。
令和六年五月十七日、青木旅山が歩く。

nanohana
まさに「おくのほそ道」だ。

芭蕉はこのように書いている。
「高山深々として一鳥声聞かず 木の下茂りあいて夜行くがごとし・・・」

芭蕉の頃は木が鬱蒼として昼間でも暗く、よく山賊が出た。このため屈強な若者に案内してもらったそうだ。そういう意味での「難所」だったかもしれない。

ガイドによれば赤倉入口(370m)から頂上(510m)迄ブナ林の二十七曲りを800m、下りながら約3000m歩いて尾花沢入口へ。
歩くという点では15日の中山越よりはるかに楽だった。

momomatsuri
山越えは午前中に終わり、おしんで一躍有名になった銀山温泉に立ち寄った。

◆行程:赤倉温泉→山刀伐峠→銀山温泉→尾花沢泊
◆経費:ガイド代8,000円/昼食2,300円/飲物2,670円/夕食2,050円/宿13,000円/交際費15,110円//計43,130円