■花の旅(3/20-4/25) 総括
寒さの残る中、序盤に体調を崩し中盤以降は脚の疲れが出たが、特に大きなトラブルもなく進行。
4月に入って、北上するにつれ各地で見事な桜や季節の花を堪能し、まさに花の旅となった。
■出発前夜
元禄2年(1689年)、芭蕉は西行没後500年を記念して弟子の曽良と共に憧れのおくのほそ道を訪ねる旅に出た。
芭蕉は能因、西行らの歌枕(古歌で詠み込まれ、親しまれた名所)を巡りながら旅中、旅後に詠んだ150近い句の中から50を厳選し
5年後、死の半年前におくのほそ道を書き上げた。
私は昨年夏より旅を愛した漂泊の俳人、歌人の若山牧水、山頭火、良寛等の足跡を訪ねる旅を続けて来た。
今回の旅の目的は、歌枕、俳枕の地そして現在の名所、景勝地を訪ねる事である。
歴史と文学が好きなのでおくのほそ道以外もあちこち訪ねつつ、芭蕉の句碑など訪ねながら俳句を写真、動画で紹介したい。
今、心に決めている事は芭蕉のおくのほそ道(場所)、約2000〜2400kmを歩く事。
但し3日歩いたら1日はリュックを宿に残し身体を休め、一週間先を視野に入れつつも目の前の1日に集中、楽しんできたい。
青木旅山「おくのほそ道」第一章
花の旅 其の一、深川~日光
■旅立ち~令和6年3月20日(歩16km)
名駅で友の見送りを受けた後一路深川に向かいました。
深川八幡宮で参拝後、芭蕉が出立した採荼庵、芭蕉稲荷神社、記念館などを訪ねた。
途中で回向院〜両国国技館〜浅草寺を通りながら千住大橋に達した。
初めの地。
ここからむすびの地、大垣を目指す。
矢立とは当時の携帯用筆記用具。
深川の居を売払い、門人杉風の別邸「採荼庵」に1ヶ月滞在後、芭蕉は旅立った。
作品「おくのほそ道」の有名な序文は次から始まる。
~月日は百代の過客にして行かふ年も又旅人也…
隅田川テラスを歩いていた頃は天気も良かったが… 雨と強風で傘も役に立たず…矢立の碑など立寄りながら夕方5時半に千住の宿に着いた。
◆今日の句:
「草の戸も住替る代ぞひなの家」
「行春や鳥啼魚の目は泪」
◆行程:深川→北千住
◆訪問地:深川八幡宮、採荼庵、臨川寺、芭蕉稲荷神社、芭蕉記念館、回向院、両国国技館、浅草寺、素盞嗚神社
◆経費:地元からの交通費7,968円/入場料200円/昼食630円/夕食924円/宿9100円//合計18,822円
■3月21日(歩30km)
千住より約10km歩いて草加に着いた。
まずは芭蕉像のある札場河岸公園に立ち寄った。
正直言えば煎餅以外ほとんど知らないまま来てしまった。
芭蕉愛好会の中心人物に会い色々話を聞いた。
草加はもともと嘗て沼地であり、草を入れて草加の地名になったそうだ。
芭蕉は作中で草加に泊まった事になっているが実際は春日部。
草加から越谷、そして宿泊先の春日部までひたすら歩いて17時35分にホテルに着いた。
◆行程:北千住→越谷→春日部
◆訪問地:火あぶり地蔵、おせん茶屋、札場仙岸公園、草加松原
◆経費:昼食950円/飲物300円/夕食760円/宿8500円//計10,510円
■3月22日(歩32km)
芭蕉の春日部の宿と言われる東陽寺に戻り石碑確認、小淵山観音院を訪れた後、一路茨城県の古河に向けて歩いた。
午前中は足裏に痛みがあり辛かったが、午後は利根川や各地の花まつりに立ち寄り少し気分転換出来た。
春日部の小淵山観音院は円空と芭蕉が一緒に泊まったという説がある。
円空は庶民救済を目的に全国を旅し、12万体の木仏を彫った修行僧だ。
また、芭蕉の私の好きな俳句の句碑があり嬉しかった。
「ものいえば唇さむし秋の風」
3時間ほどで幸手市に入る。
権現堂堤の桜まつりに立ち寄り、足の痛みも少しやわらいだ。
その後、国道4号線を1時間ほど歩くと大河に出た。
雄大で静かな利根川、青い空に雲、北には山が見られ足元には菜の花が咲く。
ひとり感動、旅の素晴らしさに浸った。
足取りも軽くなり古河に入ると、古河桃まつりの看板を見つけた。
桜にはまだ早かったが桃はまさに今が見頃、菜の花とのコントラストも美しかった。
◆行程:春日部→杉戸→幸手→古河
◆訪問地:東陽寺、小渕山観音院、栗橋関所、幸手権現堂の桜祭り、古河桃まつり
◆経費:飲物381円/昼食803円/夕食784円/宿7,600円/洗濯600円//計10,168円
■3月23日(歩29km)
雪混じりの雨の中、6枚重ね着して出発。
上野〜宇都宮間の線路沿いを延々歩いた。
アダモの雪が降るを歌いながら。
約10kmで間々田八幡宮に到着。
源頼朝の手植えの松がある由緒ある神社。
時代は下り、日光街道36里が出来た時に丁度中間点にある為、間々田と名付けられた。
午後は数キロ続く農道を対向車に集中しながらゆっくり歩を進めた。
大神神社に着いたのは夕刻。
陰る光は雰囲気があり如何にも霊験あらたかに感じ、心を込めて祈った。
◆行程:古河→間々田→小山→栃木
◆訪問地:間々田八幡宮、大神神社
◆経費:昼食1,130円/夕食1,950円/飲物240円/神社札1,025円/タクシー2,600円/宿9,750円//計16,695円
■3月24日(歩7km)
昨夜の就寝中、シーツに大量の下血があった。
悩んだが、痛みが無いことと一度限りだったので旅を続けることにした。
深川から100km歩いて疲労困憊だったがここでやめたら恥ずかしいと思ったし、白河の関まで16日分は宿も予約済だったことも
ある。
不幸中の幸い、栃木市で連泊中の初日のことで、今日は休息日。
※後日、仙台の居酒屋で知り合った薬剤師と医師から、疲れでの下血で問題無しと言われすごく安心した。
10時半まで部屋でゆっくりした後、近くの山本有三ふるさと記念館に出かけた。
小学校の時に学校で上映された「路傍の石」に感動。今でも次の名言を覚えている。
たったひとりしかない自分を
たった一つしかない一生を
ほんとうに生かさなかったら
人間、生まれてきたかいがないじゃないか
館員と気が合い、山本有三の話で盛り上がり楽しい時間を過ごした。
その後、蔵の街として知られる巴波川沿いをブラブラした。
◆行程:午前中は休息、午後は市内をぶらぶら見学
◆訪問地:山本有三ふるさと記念館、塚田歴史伝説館、日光例幣使街道
◆経費:昼食1,000円/夕食1,000円/入館料200円/宿7,200円//計9,400円
■3月25日(歩21km)
雨が降ったり止んだり。
シャンソンタンゴの名曲「小雨降る径」を口ずさみながら~静かな雨~並木の雨~
北赤塚の一里塚。
ちなみにこの旅日記にもしばしば出てくる「一里塚」とは、一里(約4km)ごとに旅の指標として建てられたもの。
両側に盛り土して一対の木が植えられた。
全国的に整備されたのは徳川秀忠の時代で、現在ではその跡地が全国に見られる。
北赤塚の一里塚は見事なエノキが残っている貴重なもの。
鯉沼九八郎の碑があった。
鯉沼は民権論者で明治17年栃木から宇都宮へ県庁を移す際に県知事等の暗殺を企図。
誤爆により左腕を失った。9年獄に繋がれた後、県会議員となった人生を想像した。
◆行程:ホテル→壬生→栃木追分→鹿沼
◆訪問地:金売り吉次の墓、北赤塚の一里塚、鯉沼九八郎の碑
◆経費:バス代200円/昼食1,200円/飲物300円/夕食1,520円/洗濯500円/宿7,550円//計11,270円
■3月26日(歩29km)
朝から終日激しい雨。
トラックに水しぶきを浴びながら早足で先を急いだ。
日光入口の杉並木寄進碑、素晴らしい杉並木街道に達した。
そこからホテル迄の15kmは風も強くなり寒さも厳しくなった。
家も少なく休む場所もそしてトイレも無い。(途中、雑貨屋でトイレを借りた)
最後は森の中でナビも効かなくなり立往生。
辺りも段々暗くなり、背のリュック8.7kgがやたら重く感じる。
やっと見つけた家で今市駅への道筋を確認。
夜、寒さに震えながらホテルに入った。
◆行程:鹿沼→文鋏→板橋→杉並木→今市
◆経費:昼食831円/飲物他490円/夕食950円/洗濯450円/宿6,900円//計9,621円
■3月27日(歩32km)
ホテルから外に一歩出たら真っ青な空。
標高2486mの男体山は昨日の寒さで雪、日光連山も雪。
くるっと反対を見れば、目の前に追分地蔵、日光そして例幣使の杉並木街道。
嬉しさで一度に疲れを忘れた。
7km続く並木街道を抜け市街地そして美しい神橋に着いた。
凄い人、過半が外国人だが皆笑顔。
競って写真撮影。
天気も快晴、元気に芭蕉の足跡を訪ねた。
句碑の周りには誰一人いない。
芭蕉の句碑は全国に三千ほどあるそうだが、一般に目にするのは殆どが近年の没後何年とか生誕何年とかの記念で建てられた新しいものだという。
この句碑は隣の案内看板がなければ読めないが、かなり古いものだろうか。
憾満(かんまん)ヶ淵。
不動明王が現れる霊地として知られている。
裏見の滝入り口。
ナイアガラやアイスランドにも滝つぼの裏から見られる滝がある。
日本版のJourney Behind the Fallsだ。熊が出るのはここだけだが。
◆今日の句:
「あらたうと青葉若葉の日の光」
「暫時は滝に籠るや夏の初」
◆行程:今市→日光→新高徳駅→今市
◆訪問地:神橋、大日堂跡、憾満ヶ淵、輪王寺、化地蔵
◆経費:昼食1,200円/飲物320円/夕食950円/タクシー1,300円/宿6,900円//計10,670円
■3月28日(歩15km)
休息日なので朝は10時まで部屋で寛いだ後、この地で晩年を過ごした二宮尊徳の報徳二宮神社、墓参りに行きました。
某Tトラベルの友人OBの薦めもあり、尊徳縁の報徳庵にて天ざるそばを頂いた。
極上に美味しかった。
おくのほそ道の会津西街道を少し歩いた後、夕方、友の待つ鬼怒川温泉で湯ったり旅の疲れを癒やしました。
◆行程:今市→報徳庵→日光→鬼怒川温泉
◆訪問地:報徳二宮神社
◆経費:昼食1,500円/飲物他165円/列車418円/宿7,630円//計9,713円
長い旅の最初の一里塚、ほぼ予定通り日光に到着しました。
4日目栃木市で体調を崩しましたが立ち直り旅を続け、移動日、休息日併せて8日で200km近い距離を歩いて来ました。
今年で数えの77歳、喜寿です。
目はかすみ耳は遠く、頭は回らず、身体は劣化の一途を辿っています。
只ここまで夢を持ち、前を向いて自分の好きな旅が出来る幸せに感謝しています。
自分の心身に向き合いながら、旅を楽しみ、どうしたら大垣まで歩いて行けるのかをずっと考え続けています。
当初計画は今も変わらず次の通り。
おくのほそ道:108日
別途旅行:12日
予備日22日で8月8日大垣入り